劇団四季の名前をご存知の方も多いと思います。
日本を代表するミュージカル劇団、といってよいでしょう。
創立58年を迎えるこのプロの劇団は、
元々はフランス文学のストレートプレイ(演劇)を上演するために設立されました。
その劇団四季が、いま被災地東北を回っています。
『ユタと不思議な仲間たち』という劇団四季のオリジナルミュージカルを
被災地で子供たちに無料で鑑賞してもらうため。
なぜ劇団四季なのでしょうか?
なぜミュージカルなのでしょうか?
その理由は今回上演する『ユタと不思議な仲間たち』にあります。
今回の特別公演で劇団四季が回る東北3県13都市は、
いずれも東日本大震災による津波の被害のひどかったところ。
そこで上演するこの作品、こんなあらすじです。
東京から家庭の事情により母親の実家のある東北にやってきたユタ少年。
田舎になじめない彼は地元の子供たちのいじめに苦しみます。
そんな時に知り合ったのが近くの廃寺に住む「座敷わらし」たち。
「座敷わらし」は、飢饉などによって、生まれてすぐに死んでしまった子供たち。
生まれてすぐ、名前もつけられないうちに死んでしまったために、
成仏することも出来ず、その魂はさまよっています。
そんな彼らからユタは生きていることの素晴らしさを学び、
自ら心を開くことで地元の子供たちとも分かり合えるようになる、というもの。
今回の震災で、津波で、子供たちは両親や大切な人たちをなくしました。
被災地の子供たちに、生きていることの素晴らしさ、懸命に生きて行くことの大切さを伝えたくて
今回の公演が実現したとのことです。
メンバーの中にも被災地の出身者が。
座敷わらしの首領(ドン)「ペドロ」役は、岩手県釜石市出身の菊池正さん。
彼が育った町もまた津波に流され、
学生時代に通ったお店もすっかり原形をとどめない姿に。
また同じ座敷わらしの「タンジャ」役は、
宮城県仙台出身の若手、柏谷巴絵さんが演じています。
劇団四季のこの活動はニュースでも大きく取り上げられていますので、
ご存知の方も多いでしょう。
しかし地元にも、震災直後から地道に復興支援を続けている劇団があります。
それは仙台に活動の拠点を置く「SCSミュージカル研究所」。
1988年に仙台市市制100周年と政令指定都市となったのを記念して上演された
市民ミュージカルのメンバーが中心となって設立されました。
主宰の梶賀千鶴子氏は、仙台出身のプロの演出家。
かつて劇団四季の代表浅利慶太氏から請われて劇団四季に入り、
「コーラスライン」などのブロードウェイミュージカルの日本初演の際には
自らニューヨークに渡って振付を受けてきた他、
今回の劇団四季の『ユタと不思議な仲間たち』では初演時の脚本や
挿入曲の作詞を担当するなど、「日本のミュージカルの母」とも呼べる人物。
彼女の地元に対する愛に感銘を受けた廣瀬純氏(SCSミュージカル研究所代表)を中心として、
SCSミュージカル研究所は1990年に設立されました。
設立後は、常に地域に根差した活動を続け、県の委嘱ステージ上演等の他、
いくつもの市町村の市民(町民)ミュージカルに力を注いできました。
今回の震災で特に被害がひどかった宮城県南三陸町(当時は歌津町)も、
以前地元の子供たちを中心としたミュージカルを制作しており、
そのつながりもあって震災直後から支援を続けてきました。
仙台市近隣の七ヶ浜町でも同様の活動、支援を行なっています。
先ほどのタンジャ役の柏谷さんもこのSCSミュージカル研究所の研究生出身。
それだけに、地元に対する、被災地に対する想いはひとしおです。
被災地では、自分自身が傷つきながら支援活動を続ける団体が多く存在します。
これらの団体は必ずしも報道には取り上げられませんが、
自分たちの地元のために頑張っています。
彼らの活動を見守り、また劇場に足を運ぶことで支援することも、
我々にできる小さな復興支援であると思います。
■参考リンク
SCSミュージカル研究所(H.P.):http://www.scsmusical.com/
劇団四季(東北応援プロジェクト):http://www.shiki.jp/closeup/yuta/tohoku/
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